相続税対策|サブリースアパート経営の問題点
「相続税の対策になる」このうたい文句で高齢者がアパート経営に乗り出す。
いわゆるサブリースによるアパート経営である。
平成29年9月7日の産経新聞では、建築業者の不当な勧誘による被害が報じられている。このコラムでは注意喚起の意味をこめて、被害の実情を解説する。
《目次》
1.サブリースによるアパート経営
2.アパート経営による相続税の節税効果
3.アブリースアパート経営 被害の実情
4.まとめ
1.サブリースによるアパート経営
サブリースとは業者が土地建物のオーナーから物件を丸ごと借り上げ、最終使用者に転貸する契約である。アパート経営ノウハウのない人でも経営に乗り出せるメリットがある。
アパート経営には入居者の募集、家賃回収、滞納者へ対応、物件の維持管理などさまざまな業務が付随する。アパート経営の知識の無い人にとって、これらの業務を一括で委託できる便利な仕組みであるといえる。通常は10~30年間に渡り、業者が家賃保証をするため、その間オーナーは安定的な収入を得ることができる。
業者にとっても、建築工事で収益を上げ、さらにサブリース契約で利益を上げることができる。うまく機能すればオーナーおよび業者相互のメリットにつながるのがサブリース契約だ。
2.アパート経営による相続税の節税効果
サブリースによるアパート経営が盛んになったのは、直近20年くらいだろう。つまり相続税の対策になると宣伝されているからである。その仕組みはこうだ。
相続税の課税対象となる不動産(特に土地)を所有している人があるとする。土地は更地の場合がもっとも利用価値が高く、相続税も高く課税される。
一方で賃貸用の建物(アパート等)が建っている場合、貸家建付地とよび、その土地は相続税の課税が軽減される。土地の売却価値が下がるからだ。アパート経営にはこのような相続税減税効果がある。
さらに平成27年の相続税改正により、課税対象者が増えたことでサブリースによるアパート経営に乗り出す人が増加したようだ。ところが・・・
3.サブリースアパート経営 被害の実情
サブリースアパート経営において問題点が噴出している。つまりオーナーが業者から家賃保証される期間(通常10~30年)が終了する際、業者から大幅な家賃減額を迫られているのだ。
アパート経営にノウハウが無いオーナーにとっては業者の言いなりである。仮に業者と契約解除し、自らアパート経営しようにも近隣には新しい同種の物件が飽和状態だ。
入居率は下がり、家賃も下がる。自己破産に追い込まれている事例が続発している。悪質な業者の手口はこうだ。
《悪質なサブリース業者の手口》
①「家賃が下がることは無い」との口頭勧誘でうまく高齢者を乗せる
②建築工事で収益を上げる目的で、サブリース解約と新たな建築を次々と繰り返す
③家賃保証期間満了後、大幅な家賃減額で自らのサブリース収益だけは確保する
業者は絶対に損をしない仕組みなのだ。
4.まとめ
以上のように、サブリースによるアパート経営は本来の目的・趣旨が根幹から崩れつつある。ノウハウの無い人が経営できるような甘いビジネスはない。十分注意してほしい。
また業者の説明を十分確認し、専門家の助言を得るなどの自己防衛を図ってほしい。
【この記事の執筆者】
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◆プロフィール
奈良県橿原市 1975年生まれ
奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆奈良県橿原市議会議員/井ノ上剛(いのうえごう)公式サイト
◆介護職員実務者研修修了
◆社会保険労務士、行政書士
(執筆の内容は投稿日時点の法制度に基づいています。ご留意ください。)
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