障害者の大量解雇
障害者の大量解雇に歯止めがかからない。3種類ある障害者就労支援のうち、A型作業所で顕著である。
平成29年8月23日読売新聞によると、直近2カ月で380人の障害者が職を失ったという。
そこで、今回のコラムでは障害者の大量解雇問題について取り上げる。
《目次》
障害者A型作業所とは何か
正式名称を就労継続支援A型事業所と呼ぶ。一般企業での就労は困難だが、障害者作業所なら勤務可能な方向けの就労支援サービスだ。あなたの街でパンを製造販売する作業所をイメージすると良い。
この他に就労継続支援B型、就労移行支援がある。一覧表にまとめると次のようになる。
移行支援 | A型 | B型 | |
最低賃金制度 | 適用されない | 適用される | 適用されない |
一般企業への就職 | 目指す | 難しい | 難しい |
(私は地方議員の傍ら障害者作業所の設立支援を業としている)
何が障害者の大量解雇を引き起こしたか
A型作業所では障害者1人に対し、日額8000円程度の福祉サービス費が支給される。作業所を支える支援員の人件費、施設維持費などに充当する手当だ。
この福祉サービス費は障害者の賃金に充当することが禁じられる。障害者の賃金は外部からの収益で賄うのが原則なのだ。外部からの収益とは例えばパンの販売利益、内職請負、ビル清掃などが主流である。
しかし多くのA型作業所において、福祉サービス費を障害者の賃金に充当している違反が発見された。つまり障害者の方々が日中行う作業(訓練)は何らの付加価値を生んでいなかったのである。A型作業所の本旨に反する事例である。
この違反を行政が重要視し、平成28年から監視を強化した。結果、廃業に追い込まれる業者が続出し、障害者の大量解雇を生んだ。
雇用助成金を得るために障害者集め
さらに問題とされているのが、特定求職者雇用開発助成金(通称特開金)だ。この助成金は雇用保険を財源とするもので、雇用保険に加入する障害者が助成金対象である。障害者一人あたり最大2年240万円が支給される。問題とされるのは、この受給期間が終了する障害者に自主退職を促し、新たな障害者を助成金付きで迎え入れる手法だ。
まさに障害者を食い物にする、許されざる方法である。
まとめ
今回読売新聞が取り上げた記事は、不正事業者を一掃する契機となるだろう。本来のA型作業所の理念を取り戻し、就労意欲のある全ての障害者が働ける環境を作ることが社労士・行政書士と地方議員を兼ねる私の責務であると自負する。
【この記事の執筆者】
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◆プロフィール
奈良県橿原市 1975年生まれ
奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆奈良県橿原市議会議員/井ノ上剛(いのうえごう)公式サイト
◆介護職員実務者研修修了
◆社会保険労務士、行政書士
(執筆の内容は投稿日時点の法制度に基づいています。ご留意ください。)
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