判例研究~住民投票に法的拘束力はあるか?

■那覇地裁 平成12年5月9日判決

<判旨>
ヘリポート移設是非を問う住民投票の結果を無視した名護市長 違法性なし。

■住民投票とは?

自治体の重大な課題を問う住民投票。

近頃では大阪都構想をめぐる平成27年の住民投票が記憶に新しいところです。

奈良県では生駒市が住民投票条例を制定し、平成29年4月施行しました。

住民投票条例の実施に当たっては、次の3つの意見があります。

・賛成A(住民投票結果に法的拘束力を持たせる)
・賛成B(住民投票結果に法的拘束力を持たせない)
・反対

それぞれの意見の理由を考えてみます。

■住民投票に関する様々な意見

賛成A
「直接民主制こそ、民主主義の原点であり、その現れである住民投票結果に法的拘束力を持たせなければ、意味がない」

賛成B
「直接民主制こそ、民主主義の原点ではあるが、住民投票結果に法的拘束力を持たせては、議会と首長を軸とした地方自治の本旨に反する」

反対
「住民投票条例の実施自体(直接民主制)は、間接民主制を土台とした地方自治の本旨に反する」

本件判例における名護市の住民投票条例には、元々、市長に対する法的拘束力が規定されていません。

判旨ではそのことを理由に市長の違法性を排除していますが、那覇地裁は「賛成B」に近い見解を述べています。

■私見

私は那覇地裁の見解には反対で、むしろ「賛成A」の立場です。

そもそも、首長が住民の多数意思とは真逆の施政を行っていることが問題なのです。

「間接民主制こそが地方自治の原点」ではなく、
「住民意思こそが民主主義の原点」なのです。

議員や首長が存在し、間接民主制を強いているのは、便宜上それが最も合理的だからです。

(現代社会では、毎度毎度、全員参加型の直接民主制の実行は不可能という意味です)

民主主義とは何ぞや

ということを考える機会となる判例です。

170510投票.jpg

【この記事の執筆者】

井ノ上剛(いのうえごう)
◆プロフィール
奈良県橿原市 1975年生まれ
奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
社会保険労務士、行政書士
奈良県橿原市議会議員/井ノ上剛(いのうえごう)公式サイト
タスクマン合同法務事務所 代表

(執筆の内容は投稿日時点の法制度に基づいています。ご留意ください。)