政策提言②介護予防分野への重点予算配分

橿原市の介護予防|橿原市議会議員いのうえごう井ノ上剛

複数回に分けて、橿原市に対する政策提言を行います。

第2回の政策提言テーマは「介護予防分野への重点予算配分」です。人口の高齢化に伴い、将来の悪化が懸念される、介護保険財政の改善策を具体的に提言します。

同じ内容を動画でも説明しています。

介護保険財政の現状

初めに、橿原市の介護保険財政の現状についてご説明します。介護保険財政は、一般会計から分離され、「介護保険特別会計」として管理されています。

政策提言②介護予防分野への重点予算配分1

橿原市の令和6年度の一般会計予算が512億円、介護保険特別会計予算が98億円ですから、その大きさが分かります。

介護給付費、つまり実際に介護サービスの提供に使われた金額を比較すると、令和5年度は71億円、令和6年度予算では75億円と、近年増加の一途をたどっています。

政策提言②介護予防分野への重点予算配分2

団塊世代の方の全てが75歳以上、つまり後期高齢者となる2025年から、団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年にかけて、介護保険財政の悪化が懸念されています。

介護保険制度

ここで介護保険制度について簡単にご説明しておきます。介護サービスを受けるためには、保険者つまり市町村に対して、要介護認定申請を行う必要があります。要介護認定申請は、65歳以上の方なら誰でも申請することができ、40歳以上65歳未満の方は、特定疾病を発症している場合に限り申請することができます。

審査の結果は、要介護1から5、要支援1・2、非該当の8種類で通知されます。要介護が介護サービスの対象であり、要支援が介護予防サービスの対象です。非該当であっても市独自の介護予防サービスを使うことができる場合があります。

政策提言②介護予防分野への重点予算配分3

要介護認定度が高いほど、毎月多くの介護サービスを受けることができるため、介護を必要とする方にとっては、自分の要介護度が高く認定されることを望む傾向があると言えます。これはご家族にとっても同様です。

しかし現実的には、日常生活の自由が利かなくなることを望む方は、決していないと思います。全ての方が年齢を重ねても元気に活動し、自分の望む場所に自由に行き来したいと望むのが本心でしょう。

市議会ではよく「要介護認定審査」が厳しいとか緩いとか、そういった表面的な議論がなされますが、真に議論が必要なのは、市民の健康維持や要介護状態にならない施策を、どのように講じるかです。

この部分の予算が「介護予防サービス費」、および「市独自の総合事業費」として表れます。令和6年度予算では、合計8億円が計上されています。

政策提言(介護予防分野への重点予算配分)

ここで令和6年度の介護サービス費75億円と、介護予防サービス費8億円の意味の違いを検討してみます。

介護サービス費は、すでに要介護状態となった方々をサポートするための費用です。一部の方は要介護状態が改善する場合がありますが、多くの方は現状維持または要介護度が悪化するため、市の介護サービス費は年々増加しています。

政策提言②介護予防分野への重点予算配分4

一方の介護予防サービス費は、要介護状態の進行を予防し、健康で自由な生活を送るためのサポート費用であり、言わば先行投資的支出であると言えます。

私の政策提言は、この介護予防サービス費を先行投資であると捉え、予算を重点配分するものです。

橿原市では、介護予防を目的としたサークル活動や運動教室の運営に予算を投じています。この分野の予算を増加させるとともに、追加案として、例えば市内のフィットネスジム等において、平日昼間等、若い方の利用が比較的少ない時間帯に、高齢者が利用できるよう、予算配分を行うことを提言します。

この分野にさらに充実した予算配分を行うことが、将来の介護サービス費の増大を抑える事に繋がり、ひいては介護保険財政全体の最適化にも貢献すると考えるためです。

是非、実際の議会の場で提言して参りたいと思います。最後までお読み頂き誠にありがとうございました。

【この記事の執筆者】

井ノ上剛(いのうえごう)
◆プロフィール
 奈良県橿原市 1975年生まれ
 奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒

◆奈良県橿原市議会議員/井ノ上剛(いのうえごう)公式サイト
◆介護職員実務者研修修了
社会保険労務士、行政書士

(執筆の内容は投稿日時点の法制度に基づいています。ご留意ください。)