消費者教育に警鐘|易きに流れるな
「クーリングオフで契約解除」
「困ったときは消費者センターへ」
若者に対する消費者教育が旺盛である。読売新聞によると、すごろく形式で高校生を対象に消費者教育を施す学校があるとか。このコラムでは安易な消費者教育に対し警鐘を鳴らす。
1.消費者契約法の成り立ち
契約を締結し、双方が義務を履行する。民法が定める契約履行義務以前に、道徳および倫理観の問題である。
民法が成立した明治29年と現代を比較してみる。社会構造が複雑化し、一般消費者と事業者が対等の立場で契約すると不合理が生ずる。つまり事業者有利となる場合がある。力関係は「消費者<事業者」となる。
そこで民法の特別法として特定商取引法(S51年)、消費者契約法(H12年)が成立した。一定の条件を満たせば、消費者側は契約を解除できる。
不当な契約を迫る悪質事業者が存在するのは事実である。この制度で救済された消費者は数多いことだろう。しかし・・・。
2.インターネットによる情報格差の是正
近年パソコン、スマートフォンの普及、通信回線の高速化、およびSNSの流行により、消費者の情報力は格段に増している。消費者契約法、特定商取引法が定める、情報弱者としての消費者の定義が必ずしも当てはまらない。
一部の消費者は確信犯として、消費者契約法、特定商取引法の制度を悪用する。中小事業者に関していえば、力関係は「消費者>事業者」となる。
3.若者に何を教育すべきか
特定商取引法、消費者契約法で「消費者は保護すべき対象」と定めた時代に比べ、現代は明らかに社会環境が変わっている。この状況下で私たち大人が若者に教えることは、果たして
「8日以内ならクーリングオフ」、「困ったら消費者センターへ」
でよいのだろうか。高度情報化社会の中、力関係が「消費者=事業者」に戻りつつあるのなら、消費者教育のあるべき姿は原点に立ち返り、
「出来ない約束はしない」、「一度約束したら必ず守る」
ではないだろうか。
4.まとめ
国の消費者保護施策はとどまることを知らない。
しかし中小事業者が、一部の過剰要求消費者に悩まされている現実も報道すべきである。一地方議員として、偏重化する消費者保護施策に警鐘を鳴らす。
【この記事の執筆者】
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◆プロフィール
奈良県橿原市 1975年生まれ
奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆奈良県橿原市議会議員/井ノ上剛(いのうえごう)公式サイト
◆介護職員実務者研修修了
◆社会保険労務士、行政書士
(執筆の内容は投稿日時点の法制度に基づいています。ご留意ください。)
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