介護保険法改正(2018年/平成30年度)で市の施策はどう変わるか
介護保険法改正(2018年/平成30年度)では介護保険の利用状況を踏まえて、より実態に適した法改正が行われました。介護保険を利用する方、介護保険サービスを提供する事業者さんのために、介護保険法改正のポイントを解説します。
【目次】
①介護保険法改正で負担が増える人が出る
②介護・障害連動型の共生型サービス
③ケアマネ事業所の指定権限が市町村へ
④予防活動に取り組む市町村へ交付金
⑤まとめ
①介護保険法改正で負担が増える人が出る
2018年8月1日の法改正で、介護保険自己負担額が3割に増える人が新たに生まれます。合計所得が220万円以上で、年金収入とその他所得の合計が340万円(夫婦世帯の場合は463万円)以上の人です。全体の3%程度と考えられています。
一方でこの自己負担額には月額上限が設けられています。自己負担額が一定の金額を超えると、そもそもの自己負担をしなくても良い、という仕組みです。通常世帯で月額37,200円が負担上限です。これまで一部の高所得世帯のみ、月額44,400円までの自己負担が必要でしたが、改正により市町村民税課税世帯はすべて44,400円まで自己負担をしなければならなくなりました。この上限額アップはすでに2017年(平成29年)8月から施行されています。
②介護・障害連動型の共生型サービス
法改正の目玉として私が特に注目しているのは、介護保険と障害福祉サービスの連動である「共生型サービス]です。障害をお持ちの方が身体介護を必要とする場合、障害福祉サービス事業所がサービスを提供します。利用者本人が65歳に到達した場合、これまでは介護保険サービス事業所がバトンタッチを受ける必要がありました。仮に、障害福祉サービス事業所が介護保険サービスの指定を受けていない場合、別の介護保険サービス事業所を探す必要がありました。
今回の法改正により、障害福祉サービス事業所は、「共生型サービス」の指定を受けることができ、報酬額も格段には下がらず、そのまま65歳以上の障害をお持ちの方に介護サービスを提供することができるようになりました。利用者、事業所目線に立った有意義な法改正だと思います。
③ケアマネ事業所の指定権限が市町村へ
2018年4月から、ケアマネ(居宅介護支援事業所)の指定権限が完全に市町村に移管されました。わが町橿原市でも同様です。介護保険の保険者としての財源を担う市町村と、介護保険サービスのプランナーであるケアマネのさらなる情報連携に期待します。
④予防活動に取り組む市町村へ交付金
最後の目玉は、要介護状態の進行予防に取り組む市町村への金銭的援助です。介護保険の運用では、実際の介護保険サービスの提供だけでなく、介護状態の進行を食い止める、または軽減する取り組みこそが重要であると言えます。その取り組みで結果を出す市町村への交付金措置が法改正に盛り込まれました。各市町村が競って、健康寿命の延長に取り組むことを切に願います。
⑤まとめ
介護保険は国の法律である以上、全国どの町に住んでも一定のサービスが受けられる仕組みづくりが必要です。一方で、地域ごとの特性、個々の利用者の要介護常態に適した制度設計のためには、地域包括ケアシステムの考え方のもと、市町村が介護保険制度の主役となる必要があります。
今回の法改正で、市町村の位置づけが一段と明確化されたものと思います。身近な介護保険制度を、しっかりと見守っていきたいと思います。
【この記事の執筆者】
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◆プロフィール
奈良県橿原市 1975年生まれ
奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆奈良県橿原市議会議員/井ノ上剛(いのうえごう)公式サイト
◆介護職員実務者研修修了
◆社会保険労務士、行政書士
(執筆の内容は投稿日時点の法制度に基づいています。ご留意ください。)
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