令和3年9月議会報告
※こちらの内容は「いのうえごう広報誌 令和3年秋号」の記載内容と同様です。
【市長対談】橿原市役所の本庁舎整備問題について
今回は橿原市役所、本庁舎の整備問題について、改めて亀田市長のお考えをお聞きしたいと思います。よろしくお願い致します。
宜しくお願いします。新聞やテレビ報道だけでは伝わりにくい内容について、なるべく分かりやすくお話し出来ればと思います。
令和元年 市長選挙
さて、橿原市役所の本庁舎は今年で築60年。耐震性が危ぶまれています。亀田市長は令和元年の市長選挙に立候補された際、「既存施設活用も視野に入れ、建築計画を見直したい」と主張し、見事当選されました。当時の心境をお聞かせ下さい。
橿原市は平成30年に、分庁舎とホテルによる複合施設「ミグランス」を建築しました。総事業費は96億5000万円です。市民の皆さんから頂いた税金で、このような立派な施設を建築した直後に、市役所本庁舎を65億円もかけて整備すべきか?と考え、計画の見直しを主張したわけです。
市長就任とその後の調査検討
結果として、僅差ではありましたが、見事に当選されました。これは亀田市長の主張が、ある程度市民の皆さんにご理解頂けた結果であると思います。亀田市長はその後、すぐに市内の既存施設の活用について、調査検討に入られました。要は既存施設の有効活用によって、市役所本庁舎の建替えをストップするのが目的でしたね。その当時のお考えを振り返って頂けますか?
市民の皆さんが利用される行政窓口の大半は、すでに大和八木駅前の分庁舎に集約しています。本庁舎に残る部署は、一般市民の方々にとっては利用頻度がそれほど高くありません。これらの部署で働く職員数と、既存施設の床面積、移転費用などについて、限られた時間の中で検討を続けました。
なるほど。橿原市には様々な施設がありますが、施設選定や配置計画については、どのような観点で行いましたか?
一般市民の皆さんの利用頻度がそれほど高くない部署の移転とは言え、ある程度の地理的範囲にまとめておくのが効率的だろうと考え、万葉ホールを中心に、その周辺施設を活用する方向で検討しました。
その結果、築年数の古い施設も移転先に組み込んだがために、26億円もの費用がかかることが判明しました。長期的な維持管理費用も含めて考えると「新築したほうが安く済むのでは?」との内容でしたね。
その通りです。当時の移転案を仮に進めてしまうと、結果的に新築するのと大差ない費用が掛かることが見込まれました。私としては苦渋の決断ではありましたが、分散移転案はあきらめざるを得ませんでした。
分散移転案の取りやめ、新築計画へ
このような経緯の下、市長は令和2年4月、修正版の建替計画を出されました。この建替計画では、前市長時代に策定した計画から床面積を2000㎡縮小、建築予算も8億円縮小されました。私は亀田市長のご努力を評価したいと思います。
ありがとうございます。市長選挙において、計画の見直しを訴えた以上、何とか公費投入を抑えたい一心で、担当職員らと研究に研究を重ねました。結果として部署の配置計画の見直しによって、前市長時代に策定した計画から、床面積を17%縮小、予算を12%減額する計画にたどり着きました。この計画通りに事が進めばよかったのですが・・・。
おっしゃる通り、この計画通りに進めば良かったと思います。約1年後の令和3年3月、設計業者さんから約12億円の予算オーバーを告げられたときは衝撃でした。私としては不可抗力であったと判断しています。
軟弱地盤対策費を中心とする追加事業費でした。まさか約12億円もの予算オーバーになるとは思いもよりませんでした。この時点で、新型コロナウイルスの国内感染者確認から約1年。未だ出口の見えない戦いの日々でした。まず頭に浮かんだのは「コロナ対策の事を第一に考え、建築計画をストップすべき」ということでした。
新型コロナウイルスという未曽有の災害に対して、就任直後から文字通り休む間もなく、行政の舵取りをされてきたことに敬意を表したいと思います。私が亀田市長の立場にあっても、全く同じ決断をしたと思います。このご判断は、市民の皆さんのご理解を得る事が出来るのではないかと、個人的には思います。
ありがとうございます。本庁舎建替計画の中止には、もちろんご批判もありました。「これまで費やした費用が無駄になるではないか」、「長期間にわたる議会の議論を無視するのか」など厳しいご意見もありました。しかし頂いたご意見を総合的に判断しても「今建替はすべきではない」というのが私の考えでした。
事業終了後のホテル部分へ庁舎を集約
それから半年間の間に、市長は市職員と一緒に、出せる限りの知恵を出し、まさに粉骨砕身の覚悟でこの問題に取り組んで来られました。議会で表情を見ても、心労がピークに達しているように感じました。その過程で提案された計画のうち、ようやく9月議会で最終案をご提示されましたね。分庁舎の上にあるホテル部分を活用する計画です。
その通りです。ホテル事業者さんとの定期建物賃貸借契約が、事業開始から20年後に当たる2038年に終了することに着目し、その有効活用プランとして最適な計画であると判断しました。それまでの約17年間を現在の庁舎のまま過ごすのは、耐震性能から考えても問題があるため、既存施設へ期間限定で分散移転したいと思います。
非常に合理的な計画だと思います。私は過去の仕事の経験から、法律や不動産契約の知識には自信があったのですが、お恥ずかしながら、分庁舎の上のホテル事業者さんとの契約終了後のことまで、イメージが出来ていなかったのが正直なところです。私の周囲の市民の皆さんからも「市長の計画は非常に画期的だ」、「これで橿原市が抱える施設問題が全面的に解決する」とのお声が多数寄せられています。
現状、ホテル事業者さんが鋭意運営されているため、今の段階で2038年以降のことを議論するのはいかがなものか?とのご意見もありますが、これが本庁舎整備問題についての、私の最終結論です。
ホテル事業者との契約のゆくえ
ホテル事業者さんとの契約は、更新無しの20年契約ですね。さらに複合施設全体の維持管理をお任せしている法人さんも、2038年に事業終了により清算するわけですね。市の、とある幹部職員は「2038年、ホテル事業者さんが退去した後は、高齢者向けの福祉施設として使うのが良いと思っていた」と答弁していました。市長はどう思われますか?
高齢者向けの福祉施設を否定する気持ちはありませんが、大和八木駅前の一等地で、しかも公費を投入している建物で運営するのは、いかがなものかと思います。
私もそのように思います。現状のホテルは、新築状態であるため、誘客がしやすいというメリットがあると思います。それが2038年になると、目新しさが薄れます。以後は全体を市庁舎として使うというのが市長のお考えですね。
その通りです。ホテル事業者さんには、市が建築した新しい建物で20年間、ホテル事業を運営して頂く。その間一定の成果が出れば、市場原理が働き、他のホテル事業者さんも橿原市に参入する可能性があります。これが本来の姿だと思うのです。
その計画は、前市長時代に運営会社さんと交わした契約書を、亀田市長が隅から隅まで再点検する過程で発案されたとお聞きしています。昼夜を問わず、橿原市のために死力を尽くされている亀田市長の姿をみて、天が手を差しのべ、アイデアを授けて下さったように感じます。
評価頂きありがとうございます。しかしこの計画の推進のためには、市議会における予算通過はもちろんのこと、本庁舎の所在地が変更となるため、3分の2の特別決議が必要となります。しっかりと説明を行い、議員の皆さんの同意を得たいと思います。
計画に期待致します。現時点では亀田市長の計画に賛同する議員数が足りない可能性がありますが、市長が全精力を傾けて市政に取り組んでいる姿は、多くの市民に伝わると思います。私自身もこの計画に賛同しますので、お力添えしたいと思います。本日はありがとうございました。
ありがとうございました。市民の皆さん、および市議会議員の皆さんにご理解頂けるように、今後しっかりとご説明して参ります。
市長との対談を終えて
議会内の一部には「亀田市長は議会の意見を聞かない頑固者、意見をコロコロ変え優柔不断」との批判の声があります。しかし今回の対談からも、刻々と変化する局面に応じて、臨機応変に対処している姿勢が分かります。
「頑固」と「首尾一貫」は似て非なるもの。「優柔不断」と「臨機応変」も似て非なるもの
亀田市長は橿原市のために首尾一貫、臨機応変に対処されているものと感じました。
すでに市民窓口機能が分庁舎に集約している現状を考えれば、本庁舎の建替は市民の皆さんに新たな価値を提供するとは言えません。これらに費やす膨大な費用を、教育・子育て・福祉・医療等を中心とした市民サービスに振り分ける事ができれば、どれほどの効果があるか。
市長および議会の判断が最終局面を迎えています。井ノ上剛は市役所本庁舎の建替には断固反対。亀田市長の計画案を全面的に支持します。
市役所本庁舎をめぐる、これまでの経緯
年月 | 市長 | 出来事 | 築年数 | 詳細 |
昭和36年1月 | 好川三郎 | 市庁舎建築 | 0 | 現在地で市庁舎落成 |
平成8年5月 | 安曽田豊 | 本庁舎耐震診断 | 35 | 「耐震補強が必要」と診断 |
平成17年2月 | 耐震補強基本構想 | 44 | 耐震工事の方法を決定 | |
平成18年6月 | 耐震補強実施設計 | 45 | 想定以上の耐震工事が必要と判明 現実的には工事不可のため中止 |
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平成22年12月 | 森下豊 | 新庁舎基本構想 | 49 | 【規模】17000㎡規模の建て替え 【態様】分散している施設を集約する 【場所】次の3つの候補地から ・現地拡大(9700㎡)※最有力 ・八木駅南市有地(3800㎡) ・五井町市有地(24300㎡) |
平成30年2月 | 分庁舎建築 | 57 | 上記17000㎡のうち約7400㎡を収容 (八木駅南市有地3800㎡に建築) |
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平成31年3月 | 新庁舎建築基本計画 | 58 | 【規模】11500㎡(17000㎡から分庁舎移転分を控除) 【態様】分散している施設を集約する 【場所】現地拡大 【予算】65.7億円 |
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令和元年10月 | 亀田忠彦 | 橿原市長選挙 亀田市長初当選 | 58 | 新庁舎建築場所について 「既存施設活用も視野に入れ、計画を見直したい」 |
令和2年2月 | 現地での建て替えを決定 | 59 | 「既存施設活用案は面積上の問題から困難」 【態様】分散している施設を集約する 【場所】現地拡大 |
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令和2年4月 | 新庁舎基本計画(修正版) | 59 | 【規模】9500㎡(当初計画から2000㎡縮小) 【予算】57.7億円(当初計画から8億円縮小) |
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令和3年3月 | 設計事業者より 「予算約12億円超過見込み」報告 |
60 | 市長「建て替え計画を中止、再検討したい」 | |
令和3年6月 | 市長、既存施設活用案①を議会に提示 | 60 | 【予算】14.6億円 【概要】分散範囲を近接させる 賛成9(井ノ上こちら)/ 反対10 |
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令和3年8月 | 市長、既存施設活用案②を議会に提示 | 60 | 【予算】4.2億円 【概要】分散範囲の近接よりも総費用を重視 |
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令和3年9月 | 市長、既存施設活用案③を議会に提示 | 60 | 【予算】4.2億円 【概要】案②に加え、2038年以後ホテル跡地を庁舎として活用 |
世界遺産検定会場を橿原市に誘致するために
橿原市では令和6年「飛鳥藤原の宮都とその関連資産群」の世界遺産登録を目指しています。
令和3年9月議会では、「世界遺産登録に向けて市内の機運を盛り上げる施策」と題して、以下の通り一般質問しました。
発言要旨
①世界遺産を複数保持する奈良県には、世界遺産検定会場がない。橿原市が誘致を検討してはどうか。
②彦根市の例に倣い、橿原市が独自で検定会場の設営と運営を行ってはどうか。(受験料の割引が利く)
③市独自の予算で、受験料の半額補助を行ってはどうか?(結果として正規料金の6割引きで受験可能)
④市民向けに、生涯学習の一環として世界遺産検定対策講座を開催してはどうか。
⑤市内小中学校の「総合学習」で、無償教材を使って世界遺産を学習してはどうか。
⑥奈良県、桜井市、明日香村、橿原市で構成する協議会で連携し、上記①~⑤の施策を進めてはどうか。
この発言に対して、亀田市長および文化スポーツ局長からは、非常に前向きな答弁を頂きました。橿原市に世界遺産検定会場が設置された暁には、是非みなさん一緒に受験しましょう!(井ノ上は現在2級です。上を目指します ^^)
【この記事の執筆者】
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◆プロフィール
奈良県橿原市 1975年生まれ
奈良県立畝傍高校卒 / 同志社大学法学部卒
◆奈良県橿原市議会議員/井ノ上剛(いのうえごう)公式サイト
◆介護職員実務者研修修了
◆社会保険労務士、行政書士
(執筆の内容は投稿日時点の法制度に基づいています。ご留意ください。)
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